『ストレスとがん罹患に関する研究』と中医学


国立がん研究センター・がん対策研究所の「自覚的ストレスとがん罹患との関連について」の研究によると、「長期間にわたる自覚的ストレスは全がん罹患にリスク上昇と関連」していることが認められたそうですが、そのメカニズムについては良く分かっていないとされています。

一方、がん治療について述べた中医書を参照してみると、興味深いことがわかりますのでご紹介します。

 

中医学においてはがんの原因として様々なものが挙げられていますが、その中の「七情失調」(しちじょうしっちょう)が自覚的な精神ストレスに該当します。

中医学では喜・怒・憂・思・悲・恐・驚という感情を「七情」と呼んでいて、これら自体は何ら異常なものではありません。しかしながら、これらの感情が耐えられないほど強くなったり、長期間にわたって続くようになると「失調」(均衡や調和を失う)して発病するとされています。

「特に、乳がん・食道がん・胃がん・肝細胞がんなどは、発症する前に大きなストレスを受けているケースが少なくない」のだそうです。

 

私たちも患者様から耐えられないほど大きな精神ストレスの体験をお聞きすることが珍しくないことを考えると、十分にあり得ることであると思っています。

 

人生に辛いことは付きものであると思いますが、なるべく精神的なストレスを減らす工夫をして、穏やかな心で暮らしていきたいものですね。くれぐれも皆様にご自分を大切にすることをお忘れにならないでいただきたいと願っています。

 

※:臨床家のための中医腫瘍学 鄒大同著 東洋学術出版社刊