◉気と中医学

気・氣・

この中で現在普通に使われているのは「気」だけですが、この元の文字はよく知られているように「氣」です。現在では「气」は「氣」の簡化字とされていますが、実は「气」の方が古い文字です。

この「气」は《説文解字》に「气は雲气なり」とあるように、元々「湧き上がる雲」「上昇気流」を表す象形文字であって、「水蒸気」「息」を表してるそうです。そして「空気。水蒸気。かすみ。むらむらとたちのぼる気体。」などという意味で用いられます。

これらのことから分かるように、「气」は固体・液体・気体のうちでいうと気体を、それも「流れ」を表しているので、気功などでいう気のイメージと近いものと言えるでしょう。意味としても人体に関わる「息」や「生気」という意味がありますが、強調されているのはあくまで「雲」「上昇気流」という大気における現象であることには注意が必要でしょう。

それでは「氣」はどうなのか?となりますが「米」という文字が入る事によって、がぜん人体に関わってきます。「米」は主食であって最大のエネルギー源ですから「元気」「力」「勢い」などの意味が出てきます。他にも意味はありますが、大雑把に言って「食べる事によって得られるエネルギー」位の意味と捉えれば良さそうです。

 

自然界の気と素粒子

《荘子》知北遊萹に「天下を通じて一気のみ」と書かれていますが、これは「気は全宇宙を構成する大本であって、全ての物質や事柄は気の運動変化によって生じる」ということです。

一方、現代ではノーベル物理学賞で有名になったニュートリノなどの「素粒子」が発見されておりますが、気と素粒子は非常に似ているところがあります。

 

素粒子は「あらゆる物質を構成し、あらゆる現象を起こす最も小さい粒子」なのですが、これは最も広い意味での「気」と全く同じです。2000年以上前に素粒子は発見されていた!とは申しませんが、非常に面白い類似点ですね。

 

中医学における人体の気

生命活動を維持したり、成長発育を行ったりする「機能」やそれを支える内臓や血管、血液などの「組織」を合わせて「正気」と言いますが、これが人体における「広義の気」という事になります。広義の気には「(狭義の)気」「血」「津液(体液)」が含まれます。「(狭義の)気」の強さは機能の強さを現し、「血・津液」の強さは組織の強さを現します。

中医学で単に「気」という場合は、ほとんどの場合で上記の狭義の気を指しています。

先の「氣」のご説明で「食べる事によって得られるエネルギー」と申し上げましたが、もう少し正確に言えば、中医学における「気」は、両親からいただいた遺伝要素である「先天の精」、飲食物から得られる栄養分である「後天の精」、そして呼吸から得られる「清気」が合わさってできるものです。

 

中医薬や漢方薬で気を増強をお手伝いすることはできますが、ある程度、食事の量やバランスに気を配っていただくこともとても大切です。

また、度を過ぎた肉体的・精神的ストレス、休息・睡眠不足がある場合はその点にも注意するようにしてください。